2009.06.12

球体ディスプレイで実現した躍動感溢れる奥行き表現

イメージ:球体ディスプレイで実現した躍動感溢れる奥行き表現

横浜「開国博Y150」にて公開中のアースバルーン「Home」

小さな地球が夜空に浮かぶ

直径20メートルの球体に地球が映し出され、絵画調の動物達が所狭しと立体的に動き回る作品。それが、横浜の「開国博Y150」にて公開中のアースバルーン「Home」だ。本作のCGを担当したのが、西郡勲氏と米澤拓也氏。両氏は長年に渡って共に作品を手掛けており、近作ではロックバンドACIDMANのMV等を世に送り出している。

開国博Y150での公開風景
開国博Y150での公開風景

本作を手掛けるにあたり、まず西郡氏が絵コンテを、そして米澤氏が原画を作成。両氏は同時に作業を進め、初期の段階から互いにフィードバックを重ねていった。それにより、アニメーションの緩急や色調の移り変わりを的確にコントロールし、クライマックスに至る流れを効果的に演出することができたという。

米澤拓也氏(デジタル・アーティスト/シーガ)、西郡勲氏(映像作家/ピクス マネージメント)
(左から)米澤拓也氏(デジタル・アーティスト/シーガ)
西郡勲氏(映像作家/ピクス マネージメント)

原画はPhotoshopで作成され、オリジナルのブラシ・プリセットによって実際の筆のような豊かなタッチが再現されている。それをLightWave 3D上でオブジェクトに貼り付け、作成したシーンを数回に分けてレンダリング。そして大量のレイヤーをAfter Effectsでコンポジットした。その際、PSのレイヤー階層をAEで再現する形でコンポジットすることにより、原画の味わいがそのまま保たれている。そこに西郡氏のダイナミックなカメラワークが加わり、まるでキャンバスに描いた絵がそのまま立体に起こされたような表現が生まれた。

鳥が舞うカットの制作
鳥が舞うカットは、球体ディスプレイの形状を
活かすために、弧を描く動きが多用された

しかも、カメラ移動の際に「風を掻き分ける感覚」を表現するため、空気の質感を描いた画像を3Dシーン全体に数多く配置し、常に絵画的なタッチが画面全体で立体的に動くように工夫しているとか。「3Dの仮想空間を組み立てるというよりは、むしろ絵画が3D空間と時間軸を持っていたらこうなるんじゃないか、という発想で作っているんです。また、球体の表面にただ映像を貼り付けたように見えないよう、球体の内部に空間が広がっていくように描くことで、平面のディスプレイでは得られないような独特の奥行き感を表現しました」(米澤氏)。

ヤマネコが疾走するカットのアニメーション制作
ヤマネコが疾走するカットのアニメーション制作。
空中には空気を表現するためのオブジェクトが
無数に配置されており、ヤマネコではなく
背景全体を移動させることで、絵画的な構図を実現

映像自体もさることながら、音楽監督の服部氏がアレンジした唱歌『故郷』など、サウンド面でも効果的な演出が試みられた本作。VJ活動をきっかけに映像の世界に飛び込んだ西郡氏にとって非常に魅力的な作品になったという。「今後は音と映像の新たな表現を探っていきたいです。手持ちのアイデアに、オーケストラのステージに立体映像を流すというのがあるんですが、ぜひ実現させたいですね」(西郡氏)。

さらなる展望を見据える両氏が、どのような作品を創造していくのか、ますます目が離せない。

AEの制作画面
AEで90前後のレイヤーを合成。コントラストと
彩度以外はエフェクトを一切使用せず、
Photoshopで描いた質感が大いに活かされた

会期~9月27日(日)の夜間
制作クレジット監修:向井千秋
プロデュース・脚本・演出:滝沢直己
音楽監督:服部隆之
映像監督:西郡勲
原画:BRAKICH(I ぶらきち)/米澤拓也
映像制作プロダクション:P.I.C.S http://www.picsco.net/
URL開国博Y150 http://event.yokohama150.org/
(提供:月刊CGWORLD)

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