2008.03.28

伊藤桂司さんインタビュー ♯1

イメージ:伊藤桂司さんインタビュー ♯1

第1回
僕の“これまで”を話そう

バックナンバー

1月からwithDのトップページイメージを飾ってくれているのは伊藤桂司さん。広告、雑誌、TV、ミュージックビデオなど、あらゆるメディアで多様な活躍を続ける伊藤桂司さんに話をうかがった。

マンスリートップイメージの解説も併せてご覧ください。

これまでの自分の作品のリミックスのようなもの

まず最初に、1月のwithDのトップページイメージについて伺った。

【伊藤】 一昨年から1年間手がけた、auのフリーペーパー『ifif(イフイフ)』のカヴァー用グラフィックをアレンジしたものです。このフリーペーパーはとても人気で、無料なのにかなり凝った作りでした。

アートディレクターは、グリッツデザインの日高英輝さん。彼の「ジェームス・ローゼンクイスト(※1)の『F111』みたいなイメージを取り入れたい」というリクエストに対して、僕が「1年かけて季節がループする」というアイデアを加えました。なのでタイトルが『Season Cycle』。

絵の中にはいろいろな時代のアイコンを混在させています。以前発表した絵を、こうしていじったりするのは、自分の作品をリミックスしているようなものですね。

※1:ポップアートシーンで名を馳せた画家

“自身の作品のリミックス”という言葉に、伊藤さんのクリエイティブに対するスタンスの一端が垣間見える。伊藤さんにとっての「リミックス」とは、過去と現在を交錯させ、新しいイメージを生み出すための1つの手法なのだ。

アナログ=脳は予測不可能だから面白い

アナログとデジタルが渾然となった、そのどちらともつかないような表現をあえて追求しているようにも見える作品群。双方をいったいどのように使い分けているのだろうか。

【伊藤】 コンピュータは1990年代初頭から使っています。ちょうどアナログからデジタルへという、ツールの移行時期に立ち会っている世代なんです。しばらくコンピュータを使って制作を続けるうちに、「脳と機械の相互浸食」に気づきはじめるわけです。脳がヴィジョンを創り、ソフトが具現化する。さらにそのイメージが新たなアイデアをもたらすという具合に、どんどん感覚がジャンピングしていくんです。

その作用で、デジタルの対極にあるドローイングやペインティングにも好影響を及ぼし、再びデジタルの作業へフィードバックするということが起きてるわけです。
【伊藤】 すべて手作業のことも、フルデジタルのことも、アナログとデジタルをミックスすることもあります。方法論をフォーマット化するつもりがないというか…… それにもともと僕は、新しいものにすぐ飛びつくタイプではないんですよ。メールも未だに苦手で。だってFAXの方が速いじゃないですか(笑)
伊藤桂司さん

「実は完全なアナログ人間」だという。だからこそデジタルにのめり込み過ぎることなく、クールなスタンスを貫くことができるのだろう。

他人任せで、この世界に(笑)

そもそも伊藤さんは、どのようなものから影響を受けてきたのだろうか。あの独特な世界観が育まれた背景について訊いてみた。

【伊藤】 昔から絵が大好きだったので、それ以外の方向に行くことは考えもしなかったですね。絵以外に、小さい頃にTVで見たアメリカのアニメーションやドラマ、音楽、漫画などにも興味は広がっていきましたが、常に何らかのメディアに関わりたいと思っていました。

仕事を始める前に特に影響を受けたのは、ヒプノシス(※2)ですね。あとは、シュールレアリズムやポップアートとか。

※2:ピンク・フロイドやレッド・ツェッペリンの一連のジャケットのアートワークで有名なデザイングループ)
【伊藤】 自分の作品が世に出たのは、『HEAVEN』(※3)に掲載されたコラージュが最初。友達が古本屋でこの雑誌を見つけてきて、「作品を持っていってみれば」と。結局、その友達が僕の作品を送ってくれたんですけど、まったく他人任せですよね(笑)。実は僕は売り込みってしたことがないんですよ。

※3:1980年代に佐内順一郎と、ガセネタの山崎春美が責任編集だった伝説的サブカルチャー誌。前身は自販機本の『JAM』

ただ自分が面白いと思うことをやってきただけ

『HEAVEN』のアートディレクターは羽良多平吉氏。湯村輝彦氏も同誌で絵を描いていたとか。彼らに作品を見てもらったりアドバイスをしてもらったりしながら、徐々に仕事として広がっていったのだ。

【伊藤】 高校生の頃は、油絵も水彩も一通りやりましたが、しばらくすると、マックス・エルンストを筆頭に、シュルレアリズムの画家に興味を持ちはじめました。その後アメリカのアンダーグラウンド・コミック(ロバート・クラムなど)の影響を受けて、友達とコミックの回し描きをしたんです。

そのとき友達が、薄汚れたローファイなコラージュを作ってきて。エルンストの洗練されたコラージュに慣れていた目にとってはかなりの衝撃で、これまで見たことのなかった表現に、圧倒的なリアリティを感じました。

コラージュのひとつの特徴である、主観が介在しない偶然性というものが、自分のスタンスと共鳴したのかもしれませんね。たとえば、先の計画を考えるのが好きじゃないとか、戦略も立てないとか(笑)。結局、今考えると、ただ自分が面白いと思うことをずっとやってきただけなんですね。

雑誌で作品を発表して以降、特に売り込みをすることもなく仕事になっていった理由として、「周りに面白い人が多かった」と言うが、それは、伊藤さん自身に多彩な人たちを呼び寄せる何かがあるからだと、話をうかがっていて強く感じた。

インタビューは伊藤さんの仕事のスタイルや、「教える」ことについての興味深い話へと続きます。第2回をお楽しみに!

(withD編集部)

関連リンク

伊藤桂司さんインタビュー
1月、2 月のトップイメージ
伊藤桂司(KEIJI ITO / UFG)
ジェームス・ローゼンクイスト(Wikipedia)
ヒプノシス(Wikipedia)
羽良多平吉(Wikipedia)
湯村輝彦(Flamingo Studio Incorporated)
マックス・エルンスト(Wikipedia)
ロバート・クラム(Wikipedia)

伊藤桂司さんプロフィール

UFG(Unidentified Flying Graphics)Inc.代表
1958年東京生まれ。京都造形芸術大学教授、創形美術学校講師、パレットクラブ・スクール講師。広告、書籍、音楽関係のアートディレクション、グラフィックワーク、映像等を中心に幅広く活動する。 1999年にニューヨークADCゴールド・アワード、1998/2000年にメリット・アワード、コンバース・キャンペーン広告のアートワークにより2001年度東京ADC賞を受賞。 雑誌のカバーアートやグラフィックワークの他、音楽関係ではテイ・トウワ、一青窈、ボニー・ピンク、宇多田ヒカル、最近ではオレンジ・ペコー、東京ザヴィヌルバッハなどのCDジャケットやビデオクリップを手がける。現在、HOYAクリスタルとも共同プロジェクトが進行中。
http://www.site-ufg.com/

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