2008.10.16

大山顕さんインタビュー

イメージ:大山顕さんインタビュー

みんなが見過ごしているものの面白さを、いろんな人に伝えて共有したい。

「工場萌え」という言葉を聞いたとき、“そうそう、実は工場って前からカッコいいと思っていたんだよな〜”と感じた方も多いのではないでしょうか。10月のマンスリートップイメージに登場したのは、そのブームを巻き起こした『工場萌え』(東京書籍刊/2007年)の著者であるフォトグラファー/ライターの大山顕さんです。10月1日に大山さんの写真10点がアップされた瞬間は、withD編集部内でも「おおー! スゴい!」と感嘆の声が上がりました。

そこで大山さんに今までの仕事のお話や、独自の視点の秘密、東京のオススメ・スポットなどを伺いました。

身近なところにある風景の再発見

大山顕
住宅都市整理公団・総裁の大山顕さん

千葉大学工学部工業意匠科(現:工学科意匠系)で環境デザインを勉強した後同大学大学院に進み、卒業制作では工場のリノベーションについて考えたという大山さん。その頃から工場に興味を持ち始めたのでしょうか?

【大山】ずっと千葉の船橋で生まれ育ったので、小さい頃から見慣れた風景の中に工場や倉庫があったんです。ほとんどの人は工業地帯の風景なんて関心はないんですけど、僕にとってはなぜか気になる、愛着のある存在だったんですよね。大学院のとき、教授に「卒業制作は何をテーマにするんだ?」と聞かれたときも、「工場です!」と即答したくらいですから(笑)。

『工場萌え』を発表して嬉しかったのは、「10年間通勤していた電車の車窓から見える景色が、この本を見て初めて美しいものだと知りました」という読者からの声でした。工場でも団地でもジャンクションでも、「そこにあるのに誰も気にしていないもの」の面白さや可笑しさに気づくこと、いろんな人にそれを知ってもらうのが楽しいんですよ。

この答えから、大山さんの志向がコレクターやオタクではないことが分かる。「こんな身近なところに、こんな美しいものがあったんだ」という発見の喜びをクールに伝えることが彼の真骨頂なのでしょう。

工場 大山顕
これはセメント工場です。いろいろな工場見てますが、セメント工場が一番好きかもしれません。
実際に行ってみると、白い石灰が工場全体を覆っていて、雪景色のようですてきです。(大山)

Webとの出会いによって、僕たちのコミュニケーションは一変した

人によっては、住宅都市整理公団のサイトや「@nifty:デイリーポータル Z」で大山さんの作品を知った方も多いはず。そこで、書籍とWebの扱いの違いについて伺いました。

【大山】1996年頃からWebを使うようになって、従来の出版とは違ってワールドワイドな意味での出版ができるのはWebしかない!と興奮しました。書籍も面白いんですが、なかなか普通の人が本を出そうとしても難しいですよね。そこを大きく変えたのがWebの技術だと思うんですよ。

以前私が勤めていたパナソニック株式会社で提案したのも、「Webをうまく使えば、お客様の声をもっと商品に反映できる」ということだったんです。当時はまだWebがそれほど一般に普及していなかったので、社内でなかなかこのアイデアの意味を分かってもらえなかったんですが、今ではもう常識になっていますよね。

団地 大山顕
東京の平井にある団地。色はおとなしく白。形もどうってことない、いかにも団地らしい団地でぐっときます。
こういうものが日本中にあるっていうのが面白くて仕方がないです。(大山)

もう一つ大山さんにとって大きかったのは、「@nifty:デイリーポータル Z」の存在だ。このサイトのポリシーは、「インターネットの世界にない情報を取り入れる」ことだそうで、そこに大いに共感したのだそう。

【大山】例えばGoogleの場合は、「Webの中にある情報をインデックス化し、検索の精度を高めること」がテーマですが、デイリーポータル Zは全くその逆なんですね。Googleのやっていることにはもちろん意義があると思いますが、どちらに共感するかと言えば、僕の場合はやっぱりデイリーポータル Zの方ですよ。

Webの普及と技術の進歩によっていろんなことがWeb上で可能になったが、世の中にはまだWebの中にない情報も多い。そうした情報をWebに取り込んでいくことでいろんな人との出会いが生まれ、Webのデータベースが更に豊かになっていくことは間違いない。

【大山】例えば「工場って何かイイな」と誰かが思っていたとしても、なかなか自分の周りにはそれに共感してくれる人がいないとしますよね。ところがそれをWebに書いたり発表したりすると、「実は自分もそう思っていたんです!」という反応がすぐに返ってきたりします。そうすると、今まで自分が一人で楽しんでいたことに対して、仲間ができるんですよね。仲間ができると、「今度は団地が面白そうだ」とか、いろんな人の意見を知ることができる。こうした広がりを経験できるのも、Webならではのメリットですよね。

最近はインターネットを見始めた頃に比べると、面白いサイトが少ないと嘆く大山さん。「俺は本当にコレが大好きなんだ!!」という熱い想いが伝わってくる個人サイトが減って、ニュースやブログにコメントすることがWebのコミュニケーションになってしまい、物足りなさを感じているのだとか。

3395_04.jpg
横浜の大黒ジャンクション。
下から見ると何がどうつながっているのか分からない交差具合は、
「観賞用」と言ってもさしつかえないかと。
駐車場があってそこからこういう風景を見ることができるのですが、
あまり誰も気にしていない。もっと見ればいいのに。(大山)

続いて、大山さんの「今、気になる場所」を教えてもらいました。果たして、それはどこなのでしょう?

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