2006.03.09

エレクトリカル・ファンタジスタ 2006レポート #1

イメージ:エレクトリカル・ファンタジスタ 2006レポート #1

展覧会の関連イベントとして、3/5にBankART Studio(横浜)で行われた、遠崎寿義氏(ザ・ストリッパーズ:左)と高草木博純氏(電通:中央)によるトークショーの模様をお届けする。

日曜の夜。横浜の赤レンガ倉庫の近く。あたりの静けさの中、日本郵船の倉庫だった建物の階を訪れてみると、柔らかな突起を張り巡らした不思議な空間が姿を現した。この空間で2/24(金)~3/14(火)にわたり「エレクトリカル・ファンタジスタ 2006」という展覧会が行われている。

メディアアートの展覧会でありながら、WEBデザインにおけるFlashを用いた新しい表現にも注目するこの企画。参加者が好きなところに座るリラックスした雰囲気の中、展示作品の一つでもある「talby」を制作された、遠崎氏と高草木氏のトークショーが始まった。

最初に断っておくが、当日行われたtalbyやhi-touch auについてのデモについては詳しく触れない。文末に関連URLをまとめたのでご覧いただきたい。

Flashに使われるのではなく…

展示作品として選ばれたtalbyやPencil Catcherは、遠崎氏によれば「やりたいことのためにFlashを使っていて、Flashに使われていないもの」だという。talbyは擬人化して言葉を話させたりマルチユーザーでゲームやコミュニケーションを楽しむため、Pencil Catcherは実空間のUFOキャッチャー・マシンでOne Showの金賞受賞者に贈られるGold Pencilを獲る様子をネットで観戦するために、Flashがインターフェイスとして“活用”されている。

36502.jpg 36503.jpg

遠崎氏はクリエイティブ側、高草木氏はプランニング側として数々のWEBプロジェクトを手がけているが、最初に「こういうことがやりたい」というアイデアが出た際に、両者がパートナシップを組んでベーシックな検討から入ることが重要、と高草木氏。というのもグラフィックやCMのように伝統芸能的なメディアと異なり、WEBは「どこまでできるのか」「そもそもアイデアと言えるのか」というスタートの部分で、意見を突き合わせていかないといいものはできないからなのだとか。

hi-touch auの場合

例えば、2006年5月に公開されたhi-touch au。商品の魅力を伝えるメッセージ性の強いサイトとして企画されたが、新しいスタイルのカタログ情報サイトとして認知され、この数シーズン運営されている。高草木氏のテーマは、「実際に触っているかのような感覚」。自分で自分の手を見るかのような解像度での表現を実現するために、動画ではなく、膨大な枚数の静止画を用いたフレームアニメーションによるアプローチとなった。

36504.jpg 36505.jpg

遠崎氏によれば、プレビューモニターに前のフレームの絵の輪郭をマーカーで引いて微調整したり、VJ機材を持ち込んでフレームを半透明に重なるようにしてフレーム毎の撮影の微調整をしたり、最終的にモデル側でも撮影側でもモニターできるようにしたり、と作り方のシステムを作るところから取り組んでいる。2006年の春モデルでは、モデルも撮影側も習熟度が上がり、早く良質な撮影ができるようになったという。

作り手がクライアントとユーザーに追いつけていない

他の分野のクリエイティブと同じく、WEBも個々のプロダクションのキャラクターを反映して「こんなことやリたい時はアソコに相談する」的なキャスティングは浸透しつつある、と高草木氏。だが、プランニング側から見たとき、そんな相談ができる対象は非常に限られるという。あまりにも「作法に精一杯」で「プロダクトとして一番大事なメッセージを感じない」「作られたもののバックグラウンドに発想を感じない」作り手が多いからなのだとか。

例えばBMW Filmsの登場をきっかけに、一気に拡がったショートムービー・プロモーション。賞の審査をすると、WEBでの新しい表現の追求ではなく、TVCFの尺の制限が無くなっただけのようなコンテンツを大量に見えるハメになるのだとか。WEBは自分で選択してコンテンツを見ることもあって、「おもしろくないと許さない」ところがあり、そのような映像コンテンツは逆ブランディングになりかねないという。

36506.jpg

逆に、「おもしろいもの」の伝わり方は万国共通。カンヌ(カンヌ国際広告賞サイバー部門)は審査員が実際にカンヌに集まって審査をするのだが、アメリカ人やドイツ人も同じようなことを「おもしろい」と感じている。そういう意味で日本発のコンテンツがもっと流通する可能性もあるし、日本人クリエイターはもっとチャレンジすべきだ、と高草木氏。

一方で、この「つまらなさ」の原因はプランニング側にもあるとも。ユーザー側はWeb2.0的な流れもありリテラシーはどんどん上がっている。一方クライアント側もノウハウが溜まってきていて、「コミュニケーションの勝ち組」企業ではどんどん新しい表現・オモシロイ表現が受け入れられ始めているという。そんな中で作り手だけが追いつけていない。アド系のセンスとネットワーク系のセンスを組み合わせるプランニング力やクライアントへのプレゼンテーション力が追いついていないのだとか。

必要なのは「WEBをおもしろがれる力」

遠崎氏は大学在学時にWEBのオモシロさに惹かれてサイトづくりを始めた。当時の作品の一つ「SYNAPSE PROJECT」は現在のマルチユーザー・コンテンツにつながるような、「WEBという媒体ならではの」表現を目指したものだった。高草木氏はそんな遠崎氏を「実験君」と称し、「それはもって生まれたセンスで、WEBで提示されたテーマに対する解決力の伸びしろになる」という。WEBがおもしろい媒体になり、ユニークな表現が数多く生まれるには、そのような「WEBをおもしろがれる力」が必要とされている。

そんな遠崎氏だが、今後はWEBの次のフェーズを考え、生み出すような存在になりたいとのこと。一方の高草木氏は、「クリックに感触がある」という例えで、伝わるものがある・伝えられるWEBでの独自の表現を目指したいとう。一方で、「よくこんな企画が通ったなぁ」というようなプレゼンを、一人でも多くのプランナーができるように、プランナーやディレクターへの教育にも関わっていきたいとのこと。我こそはという方はそのような機会に参加されてみてはどうだろうか。

(岡本淳)

関連リンク

エレクトリカル・ファンタジスタ 2006レポート #2
talby(公開は終了しておりますので、こちらをご覧ください)
hi-touch au
Pencil Catcher
One Show
BMW Films
カンヌ国際広告賞サイバー部門
SYNAPSE PROJECT
Creative Cluster
Electrical Fantasista エレクトリカル・ファンタジスタ 2006

遠崎寿義さんプロフィール

ザ・ストリッパーズ株式会社 代表取締役社長
クリエイティブ・ディレクター
慶應大学在学中から株式会社イメージソースに参加。2005年5月に独立し、ザ・ストリッパーズを設立。 ザ・ストリッパーズ設立後は、KDDI「hi-touch au」、オムロン ヘルスケア「Everyday,Karada Scan!」、など話題のWebサイトを数多く手がけている。
http://www.strippers.jp/
http://blog.tokyoace4.com/

高草木博純さんプロフィール

株式会社電通
インタラクティブ・コミュニケーション局 アートディレクター
カンヌ国際広告祭銅賞、NY One Show Interactive銅賞、CLIO Awards ショートリスト Silver、東京インタラクティブアドアワードグランプリ、など国内外で受賞多数。auの一連のプロジェクトやスラムダンクなど話題のプロジェクトを手がけている。
http://www.interactive-salaryman.com/

このエントリーをブックマークする

このエントリーにトラックバックする

このエントリーのトラックバックURL
http://withd.jp/mt/mt-tb.cgi/1337


ゲームフリークインタビュー イマジカデジタルスケープ共同募集