2008.11.25
「NOW UPDATING…THA/中村勇吾のインタラクティブデザイン」展 まとめレポート

東京と大阪で同時開催された(8/5〜28)、tha社と中村勇吾氏の展覧会とギャラリートークの模様をまとめてご紹介。
tha、中村勇吾のデザインとは?
Webに関わる人にとっては、tha社、中村勇吾さんというと、すでにスタープレイヤー。Flashを用いた、心地よい動きを演出する作品が印象的ですが、先般ではカンヌ広告賞を受賞するなど、日本のWebデザイン、インターフェイスデザインの第一人者といっても過言ではありません。そんな中村氏の初の本格的な回顧展とギャラリートークの様子をレポートします。まずは、こちらのビデオをご覧ください。
NOW UPDATING...(Vimeo)
東京会場となった、ギンザ・グラフィック・ギャラリーは、本来グラフィックデザインの作品を紹介するギャラリーとして有名ですが、Webの作品を展示するのは初の試みとのこと。ブラウザの中で展開されるインターフェイスをどのように演出するのか。今回の展示ではこのあたりがキモになっていたように思います。
Webをギャラリーで見せる新しい試み
展示は1階と地下と使った2フロア構成。1階では中村勇吾さんのデザイン観を伝えるための展示を、地階は実際に動いている作品を見せるための空間になっていました。
会場に入ると、天井から床まで長く伸びた垂れ幕状のWebサイトの出力が目に入ります。Webで見ている時には、その演出によってあまり意識することはありませんでしたが、実際にはとても膨大な量の情報を見せられているということに驚きました。地下では、ビデオのとおり過去の作品や試作段階のものがタイムサーバーを通じて展示が同期され、空間が1つの作品として再構成されていました。

垂れ幕状のWebサイトの出力(左)、Webカメラを利用したスタディ(右)
作品すべてはネットワークに接続されており、バグが出た場合はtha社から遠隔操作でメンテナンスをしていたとのこと。こうした展示のあり方はとてもWebらしく、また展覧会の「NOW UPDATING…」というタイトルを体現していました。
申込殺到のプレミアムトークショーも開催
レポートの後半は、展覧会の裏話なども話題に上ったギャラリートーク(8月7日開催)の様子をご紹介しましょう。

左より中村氏、阿部氏、田中氏、菅井氏
今回のトークショー、応募開始から数時間で席が埋まったという人気ぶり。空席は1つも見当たらず、話に聞き入る観客の様子は真剣そのもの。…なんですが、thaから中村勇吾さんと阿部洋介さん、セミトランスペアレント・デザイン(以下、セミトラ)から田中良治さんと菅井俊之さんの出演で始まったイベントは飲み友達ということもあって、終始ユルめの居酒屋テンションで進行していく90分なのでした……。
- 意外と拍子抜けな展示構成?
ギャラリートークの冒頭、セミトラ田中さんより、いきなりキビシい突っ込みが。
【田中】(観客に)みなさん展示はご覧になられましたか? もっとやろうと思えばマッチョに、ごてごてとインタラクティブなことはできるはずなのに、拍子抜けしてる人もいるんじゃないでしょうか。
当初はセンサーを買ってきたり、インタラクションな仕組みを考えたりも。けれど、マウスを触ってしまうと、その瞬間に“家空間”になってしまう。それに見せるべきはメディアアートのインスタレーションでもない。普段やっているものを並べた上で、アレンジを加えることになったのだとか。
【中村】インタラクティブデザイナーを期待されることは多いけれども、それはサービスの反応の仕方を知ってもらうきっかけ、手段にするためであって、ルールが伝わればいいんですね。
体験から意味を考えさせる。今回の展示では、作品がシンクロして切り替わる体験で、会場が一つの作品なのだとわかること。そうした表現は、普段の制作でインタラクティブな仕掛けによってサービスを理解させているからこそ、生まれてきたものなのでしょう。
- 5秒消費問題とフォーマット
トークショーの話題は、最近のクリエイティブ全般へ。注目されては瞬時に消費されてしまう創作物への問題提起がなされました。
【田中】インタラクティブなものを作っているときに、「マウスで触った→インタラクションが起きた→結果を見て納得した→おしまい」みたいになっちゃう傾向があって。僕の中では5秒消費問題と呼んでいるんですけど。
【阿部】5秒消費問題って、仕組みを理解したらその時点で終わりで、コンテンツは置きざりですよね。そうじゃない形を考えたくて、つくったのが2004年のamana「『伝える』から『伝わる』へ 」です。会社をアピールするというお題でしたが、始まりがあって終わりがあるでもないようなものになりました。
【中村】あれはフォーマットを作った感があって、僕ら的には満足。できた度が高かった。
クリエイティブが瞬時に消費されてしまう問題への対処方法は、毎回ゼロから作るのではなくて、構造を再利用することが可能性として考えられます。フォーマットを作ることで、それがクリエイターの個性を作る基盤にもなっていくのです。阿部さんによれば、いい形式ができたら、その内容を変えていくことで、ようやく長く耐えられるのだとか。
この好例として中村さんから挙げられたのが、Projectorが制作した「ユニクロック」。CM制作などに携わっていただけに、悔しさはひとしおだったらしい。
【中村】形式的には一緒なんだけど、乗っているものが違って、おもしろい。これをやるべきだったなと。
- FFFFOUND! に見る、サービスの作り方
作るものが5秒以上消費されずに存在しつづけるための別のアプローチは、再利用が起こるべく、サービスを作ることだといいます。ここで紹介されたのがFFFFOUND!。ユーザーのフィルタを通していま世界で一番イケてる画像を共有する/見つける、tha社のオリジナルサービス。
アクセスすると、トップページに現在おすすめの画像がズラリ。この状態そのものがコンテンツを消費しつづけている、消費を促していると否定的にも見ることができますが、これを「流通を起こす」というアプローチで認識することで、新たな発見、表現を生み出しているとも言えるのです。

【菅井】サービスの中で、コミュニティまで立ち上がってくる、フレームワーク自体がすごい。あえて作りましたっていうコミュニティはつまらなくて。自然発生的に自浄作用を持って、ぶれずに来ている。
この好循環を持ったFFFFOUND! には、言葉を介さなくても存在しているコミュニティの形があるといいます。それが生まれた理由の1つに、言語メッセージを極力排したことが考えられるそうです。
【阿部】とっておいた画像を探せないので、タグが欲しいという要望がかなりありましたが、タグを付けるとそれ自体がメッセージになり、意味付けをしてしまう。それがナシだから、今も動いているのかなと思います。
【菅井】機能を削るデザインっていうか、つければ良いってもんじゃないっていうか。仕事をしてるとそういうせめぎ合いってよくありますけど、その極みだなって。
今でこそ「サービスという表現」と見られるFFFFOUND! ですが、作った当初はそう分析されてしまうことで、かえってサービスとして使いづらくなってしまうと感じたのだとか。
【阿部】サービスを作るときに、これはどこどこの誰が作ったみたいなのは、サービスを使う側からすると邪魔じゃないですか。FFFFOUND! なんかも、thaでつくったとちょいちょいアピールしつつも、ユーザーにはどこが作ったかというのはどうでもよくて、作った側は消えていた方がうまくいくんですよね。
ジャンルを超えるインターフェースデザイン
Webデザインはパソコンの中だけで完結するもの……と考えがちですが、実空間に展示した時にはその場所にも影響を与えることができるものなのだと感じました。グラフィック、空間、Web、個々に存在するのではなく、それぞれをつなぐインターフェイスデザインの存在を予感させる展覧会でした。
会期終了後かなり時間が経ってしまいましたが、展覧会の模様を映したムービーが公開されたので記事と併せてぜひご覧ください! また、こちらでご紹介した作品の多くは現在も公開中ですので、あらためてブラウザの中でも楽しんでみてください(出品作品のリンクをまとめたtha社のページはこちら)。
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