「一歩先のWeb標準」はこれまで2年以上にわたって、皆さんにお付き合いいただきました。策定中の規格を紹介したり、イベントの様子を紹介したり、それらの内容の得失を筆者なりの視点で評価してみようと試みてきましたが、残念ながら今回が最終回になります。
「一歩先のWeb標準」と題しているとはいえ、取り上げるテーマの選択には筆者なりの基準がありました。今回は私が重視したいくつかのポイントについて、過去のエントリーを振り返りながらスポットを当ててみます。
一貫性の保持や作業のルーチン化に役立つ「論理性」
この連載中で重視したことの一つに、「論理性」という要素があります。
たとえばCSS Variables(連載♯15、連載♯16)は、(詳細度などの細かい優先順位による)暗示的な依存関係の積み重ねで成り立っているCSSの値に対して、定数(constants)の導入によって、一定の論理的な関連づけを明示的に行う方法として紹介しました。また、CSS 3 Grid Positioning module(連載♯14、連載♯16)は、グリッドシステムの導入によって、コンテンツの重要度や導線といった部分を、論理的で一貫性のあるデザインに落とし込む手段として取り上げました。
「論理性」というと抽象的でとっつきにくい印象を受けてしまいがちですが、一貫性の保持や作業のルーチン化といった部分で、大きな力を発揮します。場合によっては、スクリプト等による自動化によって省力化を図れるようなケースもあります。
問題領域の区別
よく言われる「構造・表象・振る舞いの分離」というのは、問題領域を区別し、各々にそれぞれの領域の責任を分担させることで、分業化や問題発見をしやすくしたり、リソースを再利用しやすくしたりするための考え方です。一例として、カレンダーのマークアップについて取り上げたりもしましたね(この話題については、後日、webmugiさんが素晴らしいサンプルを実装して下さっています)。
この境界が曖昧な場合、後日ソースに修正を加える際に内部の依存関係を正確に把握してないと、修正個所を確認するのに余分な手間が掛かりやすくなります。
問題領域を区別することの重要性は、意外と広範域に及びます。たとえば連載♯1でも言及したmust, should, mayが混同されることで、思わぬコミュニケーションエラーに陥ることがありますし、また連載♯20のモデル・標準・実装・運用についても、いつ実装者によって修正されるかも分からない実装のバグに、あまり運用レベルのハックで振り回されたくない、なんて悩みもこれに類するものでしょう。
個人の運用レベルで解決するためのキーポイント
その一方で、標準や実装の不満を個人の運用レベルで吸収し、それが準標準的な地位を確立するという事例が出てきています。(連載♯19、連載♯20)既成の枯れた規格や技術をうまく利用し、シンプルで導入コストも最小限に抑えられているのが特徴で、jQueryのように拡張性に優れたライブラリも活躍しています。
この連載では、RIA(Rich Internet Application)については、あまり取り上げてきませんでしたが、このRIAの中にも、JavaScriptのような枯れた技術を応用して、興味深い成果を上げているものが多数あります。その火付け役的な存在といえるのがGoogleでしょう。
JavaScriptに限らず、運用レベルの工夫によって、現状を改善できる余地はまだまだあります。連載♯21、連載♯15で紹介したShaun InmanのCSS Cacheerは、サーバーサイドPHPでCSS Variables相当の実装を行ったもので、今すぐにでも導入可能な手段です。また連載♯4で言及している神崎正英さんのmetaprofも、relやclass属性の値として利用できる、メタデータの共有に有益な語彙をホスティングしています。
取り上げきれなかったもの
microformats、RDFa、microdata、XHTML2、名前空間など、この連載で取り上げきれなかった重要な規格もいくつか残されました。これらは意図的に避けていたわけではなく、単に僕の調査が充分でなかったり、まだ自分の中でちゃんと消化しきれていないことが取り上げきれなかった理由です。いずれも実地での実践にはややハードルが高くなりますが、メタデータの共有に関心のある方は、是非調べてみてください。
木達 一仁 株式会社ミツエーリンクス 浅野 紀予

セマンティック HTML/XHTML
神崎 正英
似たような理由で、HTML5も取り上げるタイミングが随分と遅くなってしまいましたね。HTML5は良くも悪くも色々とチャレンジングな標準で、もっとじっくりていねいに取り上げてみたかったのですが、個別の要素と特徴を駆け足で紹介するに留まってしまいました。
正直にいえば私自身、まだまだ咀嚼が足りなくて理解できてなかったり、誤解している可能性がある部分が未だにあります(というか、ほとほと理解するのに苦労している規格です)。このあたりは私的に、今後も情報の収集・検討を継続していくつもりです。
最後になりましたが、これまで当連載を読んで下さった方々、ブログエントリーやブックマークコメント等で反響まで寄せていただいた方々、本当にありがとうございました! また、どこかでお会いしましょう!
関連リンク
一歩先のWeb標準 バックナンバー
Web Directions East 2008 カンファレンスレポート(前編)
Google Developer Day 2008 レポート:「KML」セッション篇
ゆうさんプロフィール
ブロガー(我的春秋)。リアルな世界では研究職(知識ベース分野)、PM やフロントエンドエンジニアリング、講師(大学)、テクニカルライティングなどを転々とつまみ喰い。
http://my-chunqiu.cocolog-nifty.com/
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