法人向け|廃棄コストを削減し、利益を生む「買取」という選択肢

「移転先が決まったが、オフィスの什器や機器をどう処分すればいいか分からない」「倉庫に眠る過剰在庫の廃棄コストが、年々膨らんでいる」——そうした悩みを抱える経営者や総務・調達担当者は、今この瞬間も多いはずです。

「賢者の選択」主筆の一条です。

私はこれまで、企業のサプライチェーン改革やCSR戦略の現場に携わってきました。その経験から言えることは、「廃棄」を当然のコストとして計上している企業が、まだあまりにも多いということです。

しかし、数字は明確な答えを示しています。「捨てる」ではなく「売る」という選択が、廃棄コストをゼロに近づけるだけでなく、逆に利益を生む可能性があるのです。本記事では、法人が「買取」という選択肢を検討すべき理由を、データと実務の両面から冷静に分析します。

なぜ今、廃棄コストが経営課題になっているのか

産業廃棄物処理費用の高騰が止まらない

ここ数年、産業廃棄物の処理費用は右肩上がりで上昇を続けています。2024年時点では、混合廃棄物で前年比1割から2割の値上げが珍しくなく、2025年以降も上昇傾向が続くと各専門機関が警告しています。

その背景には、複数の構造的な要因が絡み合っています。

  • 最終処分場の逼迫(処分場の残余容量が年々減少し、受け入れ能力が限界に近づいている)
  • 人手不足による人件費の上昇(ドライバーや現場作業員の確保が年々困難になっている)
  • 燃料費の高止まり(ウクライナ危機以降、収集運搬車の燃料コストが増加している)
  • 法規制の強化(電子マニフェストの義務化拡大など、管理コストも増加している)

参考として、現行の産業廃棄物処理費用の相場観を確認しておきましょう。

廃棄物の種類処理費用の目安(1㎥あたり)
混合廃棄物(可燃系)15,000〜25,000円程度
廃プラスチック類4,000〜8,000円程度
木くず3,000〜8,000円程度
金属くず0〜3,000円程度(資源として価値あり)
廃石綿等(有害物質)15,000〜25,000円以上

出典:リサイクルハブ 産業廃棄物の処理料金相場

これを見れば分かるように、廃棄物の種類によって処理コストには大きな差があります。そして最も重要な点は、「金属くず」のように資源価値のあるものは、処理費用がほぼゼロか、場合によっては買い取ってもらえる可能性があるということです。

廃棄には「見えないコスト」が伴う

廃棄コストを論じるとき、処理業者への支払いだけを見ている企業が多いのですが、それは氷山の一角に過ぎません。実際には以下のような「見えないコスト」が積み重なっています。

  • 廃棄物の仕分け・搬出にかかる社内人件費
  • 廃棄業者との契約手続きや管理業務にかかる工数
  • マニフェスト(産業廃棄物管理票)の作成・保管にかかる事務コスト
  • 不適正処理が判明した場合の行政対応や企業イメージの毀損リスク

特にコンプライアンスリスクは、過小評価されがちです。廃棄物処理法のもと、排出事業者は産業廃棄物を自ら適正に処理する責任を負います。環境省が定める排出事業者責任に基づき、委託先の業者が不適正な処理を行った場合でも、排出した企業が行政処分の対象になりえます。「知らなかった」は免責事由にはならないのです。

「廃棄」と「買取」を数値で比較する

コスト構造の根本的な違い

「廃棄」と「買取」は、キャッシュフローの方向が真逆です。

比較項目廃棄(廃棄物処理)買取(リユース業者へ売却)
キャッシュフローマイナス(費用支出)プラスまたはゼロ(売却収入)
業者選定の負担産廃処理業者の許可確認が必要古物商許可業者を確認
コンプライアンスマニフェスト管理が必要比較的シンプル
環境への影響最終処分場へリユース・リサイクルへ
社会的価値廃棄物として消滅次のユーザーへ資産が循環

この構造を理解すれば、「買取できるものを廃棄している」という状況がいかに非合理かが見えてきます。

法人向け買取の実例と相場観

では、実際にどのような品目がどの程度の価格で買い取られるのでしょうか。オフィス什器・機器を例に整理します。

オフィス家具・什器の買取相場(状態・年式により変動)

品目一般的な相場感高価買取が期待できる条件
オフィスデスク(スチール製)1,000〜3,000円程度製造から5年以内、状態良好
オフィスチェア(一般品)500〜2,000円程度使用感が少なく、メーカー品
オフィスチェア(オカムラ、イトーキ等)5,000〜数万円ブランド品・高機能モデル
パソコン(デスクトップ)30,000〜100,000円製造から3年以内、スペック次第
応接ソファ(セット品)中古で50,000〜100,000円セット状態で状態良好

これはあくまで目安ですが、従来「廃棄費用を払って処分していた」品目が、逆にキャッシュを生む資産に変わる可能性があることがわかります。

ある法人向け買取・処分サービスの事例では、廃棄コストを最大90%削減した企業もあると報告されています。もちろん、品目や数量、状態次第でその効果は大きく異なりますが、「廃棄前に一度査定を依頼する」という習慣そのものが、企業のコスト構造を変える第一歩になり得ます。

買取が「利益を生む」メカニズム

リユース市場は拡大の一途をたどっている

「中古品は売れない」という先入観は、データが覆しています。リユース経済新聞の調査によると、2024年の国内リユース市場規模は前年比4.5%増の約3兆2,628億円に達し、2009年以降15年連続で拡大しています。2030年には4兆円規模への拡大が予測されており、法人からの不用品に対するリユース需要は旺盛です。

この市場拡大を支えているのは、物価高騰を背景にした消費者の「賢い消費」への傾向と、SDGsやサーキュラーエコノミーへの社会的関心の高まりです。中古品への抵抗感が薄れ、むしろ「良質な中古品を選ぶ」ことが合理的な選択として受け入れられている時代に変わっています。

買取収入が「雑収入」として計上される

法人が買取に出す際の税務処理についても、正確に理解しておく必要があります。帳簿価額がゼロになった資産(減価償却済みの備品など)を売却した場合、その売却金額の全額が雑収入として計上されます。つまり、廃棄すれば単なるコストになるものが、買取によって収益として処理されることになります。この点は、期末の利益調整や経費管理において、担当者が意識すべき重要な視点です。

法人が買取を活用すべき主なシーン

オフィス移転・拠点統廃合

移転や統廃合は、大量の什器・備品が一度に不用となる最大の機会です。移転先に持ち込まない家具やOA機器を早期に査定に出せば、廃棄費用の削減と売却収入の獲得を同時に実現できます。スケジュールに余裕を持って動くことが、高値査定のための重要な条件です。

過剰在庫・滞留在庫の処分

アパレルや小売業をはじめ、多くの製造・流通業で深刻化しているのが在庫問題です。売れ残り在庫をそのまま廃棄すると、廃棄コストが発生するだけでなく、製造・仕入にかかったコストも全て損失として確定します。在庫買取サービスを利用することで、たとえ低価格でも回収金額を得つつ、倉庫スペースと維持コストを削減することができます。

設備更新・リニューアル

工場の機械設備や店舗什器を更新する際も、旧設備の買取活用が有効です。特に中古の機械・工作機械は、国内だけでなく海外(東南アジアなど)にも根強い需要があります。設備更新コストの一部を旧設備の売却益で補填するという発想が、投資対効果の改善につながります。

企業M&Aや廃業・清算時

事業の整理に伴い、大量の資産を一括で処分しなければならないケースでも、買取の活用が有効です。買取と廃棄を組み合わせることで、トータルの処分コストを最小化することができます。

買取業者を選ぶ際の重要チェックポイント

買取業者選定を誤ると、思わぬリスクを抱えることになります。以下のポイントを必ず確認してください。

  • 古物商許可を取得しているか(法的に買取行為を行う資格の有無)
  • 機密情報の取り扱いに対応しているか(PCのデータ消去、書類のシュレッダー処理など)
  • 大規模案件・大量物量への対応実績があるか
  • 廃棄が必要な品目の産廃処理もワンストップで対応できるか
  • 買取できないものの引取・廃棄費用が明示されているか

特に注意が必要なのが、「買取できる品目」と「廃棄が必要な品目」が混在するケースです。買取額から廃棄費用を差し引いて「相殺」するビジネスモデルを持つ業者であれば、総コストを抑えながら一括で処理を依頼できます。

また、処理業者に廃棄物を委託する場合は、産業廃棄物処理法に基づくマニフェスト(管理票)の交付が必要です。法令に不備があった場合、排出事業者にも罰則が科せられる可能性があります(廃棄物処理法違反の場合、1年以下の懲役または100万円以下の罰金など)。コンプライアンスの観点からも、信頼できる業者との取引が不可欠です。

「買取」という選択がもたらす複合的な価値

ここまでコスト削減と収益化という経済的メリットに焦点を当ててきましたが、「買取」という行為が持つ価値はそれだけではありません。

ESG・サステナビリティへの貢献

不要になった資産を廃棄せずにリユース市場へ戻すことは、循環型経済(サーキュラーエコノミー)の実践そのものです。廃棄物の発生量を減らし、最終処分場の逼迫問題の緩和にも貢献します。これはSDGsの目標12「つくる責任・つかう責任」や、目標13「気候変動に具体的な対策を」にも直接的に寄与する取り組みです。

企業のESGレポートやサステナビリティ報告書に、「廃棄率の低減」や「リユース・リサイクル率の向上」を定量的に記載できることは、投資家や取引先への説明責任を果たす上でも価値があります。

「捨てる文化」を変える組織的意義

買取の活用を社内制度として定着させることは、「モノの価値を最後まで活かす」という組織文化の醸成につながります。従業員が日頃から「不要になったらまず売る」という発想を持つようになれば、それは購入時の意思決定にも波及します。本当に必要なものを、長期的な視点で選ぶ。これは「賢者の選択」を組織全体に広げる試みでもあります。

まとめ

本記事のポイントを整理します。

  • 産業廃棄物の処理費用は2025年以降も上昇が続く見通しで、廃棄コストは構造的に増加している
  • 「買取」はキャッシュフローの方向が廃棄と逆で、コスト削減と売却収入を同時に実現できる
  • オフィス家具やOA機器、在庫品、設備機器など、法人には多様な買取活用シーンがある
  • リユース市場は2024年に約3.3兆円規模に達し、法人からの不用品への需要は旺盛
  • 買取業者の選定では、古物商許可、機密情報管理、廃棄との組み合わせ対応を必ず確認する
  • ESG・サステナビリティの観点からも、廃棄削減・リユース促進は企業価値の向上につながる

感情ではなく、数字で判断してください。捨てる前に一度、査定を依頼する。その一歩が、貴社の廃棄コスト構造を根本から変える出発点になるかもしれません。